バラの基礎知識 バラの園芸・作業-イパネマおやじ

花の女王と呼ばれ、美しさの象徴のような存在のバラ。広い庭はもちろん、ベランダや玄関先のコンパクトなスペースでも、思ったより簡単に育てれるものです。バラを育てる楽しさを広めたいものです。

京成バラ園の風景

バラの栽培の歴史

バラはバラ科バラ属の落葉低木で、初春の3月頃から生育を開始して、やがて花枝を伸ばすと開花して、晩秋になって落葉したら休眠に入ります。現在バラの品種は、世界中に約200種の野生種があり、多くの国や地域で品種改良が行われ、現在では数万種にも及ぶ園芸品種が作出されています。園芸品店などで流通しているバラ苗などは、園芸品種でその数は数千種といわれます。

バラの歴史はとても古く、野生のバラは約3000万年前には、北半球の各地に分布していたとされます。更に、バラ栽培の歴史は、紀元前500年頃には古代中国の周王朝で栽培されていたという記録が最も古い物として残されています。

その後、紀元前後になるとギリシャでも栽培され始めたが、一般的に広く栽培されるようになったのは、3世紀のローマ帝国以降とされています。その後のローマ帝国の崩壊と共に、バラ栽培の歴史は衰退して、再び脚光を浴びるようになったのは、14世紀以後のイタリアのルネッサンス期からです。この頃からヨーロッパに於けるバラの栽培も盛んになってきました。中世以後になると、バラの発展に多大な貢献をしたとされる、ナポレオンの皇后ジョセフィーヌの存在です。ジョセフィーヌは、1802年にマルメゾン離宮に広大なバラ園を造り、世界中から集めた珍しいバラを栽培しました。1814年に亡くなりましたが、彼女のコレクションは250種類以上にも及んだそうです。加えて彼女の偉大な功績は、このコレクションを図譜として編纂していたことです。これらは保存されて、現代に至るまで残されて来ました。

オールドローズとモダンローズの誕生

18世紀初頭までのバラ栽培の歴史は、野生種の栽培が中心でしたが、19世紀中頃ジョセフィーヌが残したマルメゾン離宮バラ園専属の園芸家A. デュポンが、史上初の人工交雑によるバラが作出されたとされています。

更に、1867年にフランスの Jean-Baptiste André (fils) Guillot (ギョー)によって、初めてのハイブリッドティー系統「ラ・フランス」が作出されました。これによりバラの花形、花色、香り、四季咲き性などの遺伝的な性質に歴史的な変革をもたらしました。この「ラ・フランス」の誕生前の品種群を「オールドローズ」と呼び、以後に作出された品種群を「モダンローズ」と総称しています。

バラの原種

モダンローズと呼ばれる、新しい品種が誕生する礎となったのは、ノイバラ、ハマナス、庚申バラなどの7~8種が野生バラと呼ばれています。これら野生のバラは、バラの「原種」と呼ばれています。原種のバラは、北半球のみに自生し、その数は約200種とされています。その多くは一季咲きのシュラブ樹形またはつるバラで、一部には超大型に育つ品種もあります。ほとんどが一重咲きの品種で、これらは結実しやすくローズヒップと呼ばれる美しい実は観賞価値も高いです。

四季咲き性バラの祖先とされる、庚申ばらは木立ち性で、春の開花後も繰り返し花を咲かせます。それぞれの自生地に順応した進化をしており、樹形や性質も様々です。基本的に、樹形や花形などはシンプルでモダンローズ品種群のバラとは一味違った美しさがあります。

オールドローズ

大半のオールとローズはシュラブ樹形をしています。1867年に人工交雑により始めて、四季咲き大輪のハイブリッドティー系統が作出されました。それまで栽培されていた、全ての原種、シュラブローズなどを「オールドローズ」と総称しています。

モダンローズ

19世紀に、マルメゾン離宮バラ園の揃属園芸家A. デュポンによって人工交雑のバラが作出されましたが、1867年にフランスの Jean-Baptiste André (fils) Guillot (ギョー)によって、初めてのハイブリッドティー系統「ラ・フランス」が作出されました。チャイナローズ由来の、完全四季咲き大輪咲きという性質を持つ。

ブッシュローズのバラ達 風景

樹形による分類

ブッシュ・ローズ(木立ち性)

株が堅く、自立している樹形

直立タイプ→ほとんど横に広がらず、真っ直ぐに自立する。

半横張りタイプ(または半直立タイプ)→やや横に広がりながら自立する。

横張りタイプ→横へ幅広く伸長する。

ブッシュ樹形の品種

1枝に1つの花をつける[HT]ハイブリッドティ系統、中輪で房咲きになる[F]フロリバンダ系統、そして[Min]ミニチュア・ローズ(ミニバラ)が含まれます。四季咲き性で、花後に軽く剪定すると1ケ月半程で再び開花します。秋までの開花シーズンは、開花→剪定のサイクルを繰り返すことで四季咲き性となります。剪定作業は欠かせません。

ハイブリッドティー系統

樹形は直立~半直立性で樹高は150cm程になります。四季咲き性の大輪種で、花径が12~15cmにもなる巨大輪種も誕生しています。1本の茎に1輪だけ花を付け、花形は剣弁高芯咲きが多い。多くの品種があり、花色も豊富です。

フロリバンダ系統

樹形は横に広がるように伸びる性質が強く、樹高は100cm前後の品種が多いです。四季咲き性で花径は6~9cmの中輪種、花つきがよく房咲きになり花色が豊富です。

ミニチュア・ローズ系統

樹高が低めの矮性で、高さは15~40cmで花径は2~3cmの品種が多い。四季咲き性で、小輪の花が房咲きになり多くの花を咲かせる。

シュラブ系統のバラが満開の風景

シュラブ・ローズ

すべての品種が、つるバラとしての性質を持っている。半つる性で、自立もするが誘引して小型のつるバラとしても扱うことができる。オールド・ローズやイングリッシュローズ、モダンローズの一部、そして野生種の一部が含まれます。

野バラのようにドーム状の樹形を持つものからランブラーローズのように、横張り気味に長く枝を伸ばすもの、木立ち性に近いものなど多岐にわたっています。四季咲き、一季咲き、返り咲きなど品種により開花習性が異なります。枝が太くて堅いタイプは、繰り返しよく咲く品種に多く、見た目はブッシュ樹形の大型タイプのようです。対して、枝が細くて長いタイプは、一季咲きやイングリッシュローズに

ブッシュローズ(木立ち性)樹形よりも、枝が細くてしなやかで樹高が200cm前後の品種が多い。その中でも、枝先の伸長が100~130cm程度の短いシュラブ樹形は、ショート・シュラブとも呼ばれます。一見ブッシュ系統と同じように見えるが、細い枝先が花弁の重さで枝垂れ、開花する様は優しくて繊細なイメージを与えます。オールドローズやイングリッシュローズ品種群に多く見られます。

 

 

つるバラ(クライミング・ローズ)

つるバラには、クライミング樹形とランブラー樹形の2種類のタイプがあります。

クライミングローズには、大別して2つのタイプがあります。元々つるバラとして作出されたタイプと、ブッシュ・ローズ(四季咲き木立ち性)の枝変わり(突然変異)によってつるバラになったタイプがあります。四季咲き品種からの枝変わりによって生じたバラは、○○→元もとの品種名を引き継いで「つる○○」と命名されています。つるバラに変化することで四季咲き性は失われますが、花と葉の特徴はそのまま受け継がれています。

ランブラーローズには、

一季咲きのつるバラ(ラージ・フラワード・クライマー)細くしなやかな枝をもつ中輪房咲き・小輪房咲き、一季咲きのランブラーローズなどがある。

ハーブの園芸・作業 つるバラ

バラ株の生育サイクル

接ぎ口を境に下部が台木、上部が枝葉を含む株でありバラの木になります。主幹は多くの側枝を出し、花を咲かせる枝です。

株により異なりますが寿命は5~6年です。初夏に株元から勢いよく伸びる枝がシュートといい翌年の主幹になる枝です。

こうして主幹の世代交代をしながら、バラは花を咲かせ続けます。

バラの園芸・作業 イラスト入りです

※ つるバラといえば、一季咲きが中心でしたが、近年は返り咲きする品種が多数派になりつつあります。

クリムゾンレッド