黒星病の防除 バラの園芸・作業-イパネマおやじ
バラは病害虫被害の多い植物ですが、なかでも黒星病はもっとも多発しやすい病気であり、防除の難しい病気です。黒星病の発生の原因と防除のための対策を考えてみました。
黒星病とうどんこ病はバラの2大病気
バラにとって非常に厄介な病気で、感染すると深刻な生育障害を引き起こします。
- 黒星病の発生原因と症状⇒
- 黒星病の原因⇒黒星病とは、糸状菌と呼ばれるカビが原因です。
- 4月から11月の気温20~25℃くらいの時に発生します。特に梅雨時や、秋の長雨の時期には注意が必要です。
- 8月頃の高温期や温度の下がる11月以降は、仮に発生しても感染が広がることは少ない。
- 発症のメカニズム
- 植物の葉の表面にはワックス状の薄い保護膜があります。特に新梢の若葉に多くあります。降雨の後バラの若葉が水を弾く様に見えるのはこの皮膜があるからです。しかしこの保護膜は葉齢が進むにつれ剥がれてきて、葉の表面から失われるようになります。
- 若葉から充実した盛んに光合成を行う働き盛りの葉に達すると葉の表面は保護皮膜が落ちた状態で有ることが多いのです。保護皮膜の失われる主原因は降雨で、雨が葉の表面から皮膜を徐々に落としてゆくのです。
- 葉表面からの感染→ 葉の表面の皮膜(保護膜)が失われた部分からは黒星病の菌の進入がおこり易くなります。黒星病は葉裏からだけではなく葉の表面からも侵入するのです。
- 黒星病の症状→葉に墨をにじませたような直径3cm位の病斑ができるのが初期症状で、地面に近い葉から上に向かって病斑が広がり、やがて葉が黄変して落葉してしまいます。
- 葉や茎に小さな黒い斑点が現れることから「黒点病」とも呼ばれます。黒い斑点は少しずつ株全体に広がっていき、やがて病気にかかった部分の周りが黄色く変色して、葉が落ちてしまいます。この症状が拡大すると、株全体が弱り、花が咲かなくなってしまいます。
- 発生しやすい環境→病原菌は、病気にかかった茎や枯れた葉っぱに感染したまま土に残り、雨などによる地面からの跳ね返りによって、葉裏に付着して感染します。雨に当たると胞子が広がり、急速に感染が拡大します。一度かかると完全に殺菌するまでに大変な手間を要する、厄介な病気です。
黒星病の対処はどうすればいいか
黒星病は、新しい葉には感染しません。理由は新しい葉は水をはじき付着することが無いからです。黒星病は葉面が濡れていないと感染しないので、春の終わりや秋季の18~25℃位になる少し前に、枝葉の混みあっている部分の枝を刈り取って、風通しをよくしておくと、風が通り葉が乾燥して予防効果が高くなります。
日々の管理で、雨後にバラの枝を軽く揺さぶって水を払い落とすだけでも、かなりの効果があります。この時期は予防薬と治療薬を、月間で交互に実施します。もし、発生している場合は、治療薬を多く散布しましょう。
- 薬剤散布
- バラの芽出しの少し手前の時期、芽がプッとふくらんだタイミングで消毒をするのが効果的です。薬剤の内容は、月間4回行うとしたら、3回は予防薬で1回が治療薬の割合です。
- 感染したのを見つけたら、すぐに病気の葉を取り除き、落葉している葉も一緒に処分します。そして薬剤散布を3日間隔で、3~4回繰り返します。
- それでも治まらずに全ての葉が落ちてしまったら、枯れた葉や細い枝を切り取り、軽く切り戻しましょう。(地面に落ちた病気の葉は放置せずに処分する)そして、カリ肥料を多めに施して予防しましょう。病気の葉を取り除いて後に新芽が出たら、予防薬を散布して再発防止をしましょう。
- 消毒以外にも注意が必要なこと
- 他にはマルチングを施します。水やりの際には菌の跳ね返りを招かないように、マルチング材(ワラやウッドチップなど)は定期的に交換するとよい。加えて株元周辺の地表の殺菌をすればベストです。
- 雨や水滴のかからない場所では、黒星病は発生しないので、鉢植えは軒下や屋内に、雨が降りそうな時は軒下へ移動させましょう。
効果的な薬剤散布は薬剤選びから
予防薬剤 | 特長と効果 |
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エムダイファー水和剤 | 黒星病、べと病、灰色カビ病 |
オーソサイド水和剤 | 黒星病、べと病 |
ダコニール、 | 黒星病、うどんこ病 |
フルピカフロアブル | 黒星病、うどんこ病 |
マネージ乳剤 | 黒星病、うどんこ病 |
※同じ薬剤を使い続けると耐性ができるので、いくつかの薬剤をローテーションで散布すると効果的です。
治療薬剤 | 特長と効果 |
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サプロール乳剤 | 黒星病、うどんこ病 |
サルバトーレME | 黒星病、うどんこ病 |
トップジンM | 黒星病、うどんこ病 高温期に適する |
ラリー乳剤 | 黒星病、うどんこ病 雨期に適する |
展着剤を併用して薬剤の効果をアップする
ワックス効果を持つ新梢の患部に薬を密着させる効果があるのが展着剤です。展着剤を加えた薬剤は噴霧器による散布で新梢の患部に薬剤を密着させる効果があります。展着剤の配合無しでは、うどんこ病を治療することはできません。
予防薬と適切な展着剤を組み合わせる事でうどんこ病は確実に抑え込む事ができます。しかし、うどんこ病の厄介なところは感染しやすい新梢が常に生長を継続している事です。薬剤散布の間隔が仮に10日間隔の場合、散布の後に新たに伸長した部位はうどんこ病に対し無防備状態である事が想定されます。次の薬剤散布までの間に感染する可能性と危険度も高いのです。
展着剤は、新芽部分に付着する力と皮膜を作る能力に優れ、予防薬と併用すると効果的です。葉や茎の表面に滲むように展張する効果があり、薬剤の汚れを最小限に押さえる効果と散布ムラを作りにくい特性も併せ持ちます。薬液使用量も低く抑えられうどんこ病対策に欠かせないのが展着剤です。
- 展着剤の選び方
- 様々な機能を持つ展着剤があり、目的に沿った使い分けをする事で高い相乗効果を得る事ができます。黒星病の皮膜効果とうどんこ病に求められる展着効果、双方の性質を併せ持つ展着剤で優れた展着剤であれば安全です。
- 展着剤の使用に際して、濃度には注意が必要です。濃すぎると薬害の発生原因となり、特に複数の展着剤を組み合わせる場合は、各々が異なる特性を持つ物を組合せます。展着効果の高いもの同士を組み合わせると場合により薬害を生じます。
- 展着剤による薬害は散布した株の葉全体に及び、全滅状態になります。散布ムラを防ぐために行う行為が最悪の状態を招く場合も有りますので、展着剤の濃度と機能を重複させぬよう配慮をしておきましょう。