スミレ(菫) 季節の花-水はけのよい中性土壌で丈夫に育つ-イパネマおやじ

スミレ(Manchurian violet)は、早春になると芽吹いて、山林の周囲の草原や道端、岩場のすき間などに可憐な小花が咲いているのを見かけることが出来ます。花後には結実して種子を付けます。実が熟すると、サヤが弾けて中の種子がはじけ飛んで、翌春になると自然に開花する多年草です。初心者にも比較的簡単に育てられる、おすすめの草花です。花壇などの地植えには、高山性の品種より平地性の丈夫な品種を選んだ方が育てやすいです。

菫は季節の花です

株が小さいのでコンテナ栽培の方が育てやすい

  • 分類:スミレ科スミレ属 / 原産地:日本、朝鮮半島、中国東北部
  • 別名:マンジェリカ
  • 学名:Viola mandshurica
  • 園芸分類:多年草 / 耐寒性(強い)、耐暑性(強い)
  • 草丈:7~15cm
  • タネまき適期:1月~2月、5月~8月(未熟種子と完熟種子がある)
  • 苗の植え付け:2月~3月、秋は9月~10月(春には苗が流通する)
  • 植え替え:5月(開花後)、秋は9月~10月
  • 根伏せ:5月、秋は9月~10月
  • 開花期:4月~5月
  • 栽培方法:地植え、コンテナ(植木鉢、プランター) ※記載している各適期は温暖地(中間地)での目安です。(寒冷地、暖地では、環境に合わせた栽培を確認してください)

段落のライン緑色

  • 特徴
  • スミレの仲間は、世界中で数百種類あり日本だけでも約50種類が分布しています。多くの品種がありますが、大別すると2種類のタイプに分けられます。茎を伸ばして先端部に花を咲かせる有茎種タイプと、茎を伸ばさないで葉の上に載せるように花を咲かせる無茎種タイプに分けられます。
  • 有茎種は、茎を伸ばし花柄を出して花を付けます。無茎種は、葉がすべて根元から伸びて、葉のすき間から細長い花柄を伸ばして花を付けます。閉鎖花(へいさか)のタイプも多くあり、青紫色の花の多くは結実しないで、土中で咲いた閉鎖花だけが実をつけます。また、スミレの花は人工的に交配すれば実をつけます。
  • 無茎種のスミレは、種子の側端に粘質の脂肪の塊があり、この脂肪を蟻が食べることにより遠くに運ばれ種が繁殖します。
  • 近縁種
  • 平地性→
  • アカネスミレ (Viola phalacrocarpa)→日本列島の全域に分布するが、特に中部地方以北の低い山地に多く見られる。中部地方より以西の分布は少ない。草丈5~10cmで、花色は薄紫色。開花期は、4月~5月。
  • タチツボスミレ (Viola grypoceras)→日本全国の、低地~山地に分布する。日常で一般的に見かけることの多いスミレは、大抵はこの品種です。草丈10~30cmで、花色は赤紫色~青紫色。開花期は、3月~5月。
  • 高山性→
  • ミヤマキスミレ (Viola brevistipulata var. acuminata)→北海道、中部地方以北の日本海側に分布する、日本の固有種。湿った山林の下部に群生する。黄色の花を付ける品種は、高山性が多く栽培難度は高い。開花期は、4~5月。
  • キバナノコマノツメ (Viola biflola)→北海道、本州の中部地方以北、四国の高山、屋久島などの亜高山帯~高山帯の礫地などに自生する。草丈5~15cmで、花色は黄色。開花期は、6月~8月。

スミレ科の花

酸性土壌を嫌うので中性に土壌改良をする

  • 適応(ハーブ、漢方としての適用)
  • 浄血薬、消炎薬、利尿、滋養強壮、解毒、精神安定
  • 料理・飲み物で楽しむ
  • なし
  • 用土
  • 中性で水はけのよい土壌を好みます。
  • コンテナの場合、平地性の品種には市販の草花用培養土に赤玉土を2割混ぜる、北の寒い地域や高山に分布する品種には市販の山野草用培養土を使います。
  • 自家製用土を作る場合は、赤玉土(小粒)5:ピートモス4:川砂1:の割合で混ぜ込んだ土を使います。赤玉土は弱酸性ですが苦土石灰も少し混ぜ込みましょう。(用土1L当り3~5g)
  • 地植えの場合、植え付けの2週間程前に、深さ30cm以上に土を耕して苦土石灰を混ぜ込んでおきます(1㎡当り100~200g)さらに、植えつけの1週間程前に、土壌改良用の牛ふん堆肥や腐葉土を(1㎡当り2~3kg)混ぜ込んでおきます。
  • 肥料
  • コンテナの場合、植え付けの際に用土の中に元肥として、リン酸とカリウムが多めの緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。鉢底石を敷いて、苗を定植後の追肥は、春~秋まで、月2~3回、リン酸とカリウムが多めの速効性液体肥料を2500倍程に薄めたものを施します。(用土に、市販の培養土を使う場合、あらかじめ元肥が混ぜ込んである場合があるので、確認してから元肥を施します)
  • 地植えの場合、植え付ける前に元肥として、リン酸とカリウムが多めの緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。定植後の追肥は、春~秋の間に2~3回、骨粉入り固形油かすを置肥します。
  • 肥料の3要素は、チッ素分(主に葉を生長させる)、リン酸分(花や実を生長)、カリウム分(根を生長)です。肥料の3要素は化成肥料8:8:8を使います。
  • 追肥の際は、植物の根や葉に直接肥料が触れないように注意しましょう。

多年草です

タネがとても小さいので水に流されないように管理する

  • タネまき 
  • 適期は、1月~2月、5月~8月、発芽適温は20℃前後です。(夏場は冷房の効いた室内で発芽管理する)
  • 浅鉢かポリポットまきにします。市販のタネまき用土か「用土」の項目で準備した用土を使います。浅鉢にばら蒔きして、好光性なので覆土は必要ありません。浅鉢にまいたら鉢受皿を使い底面吸水(腰水)にしておけば水やりでタネが流れる心配がありません。(花壇などへの直まきは避けた方がよい)

底面吸水

  • 弱い苗を間引きながら本葉が2~3枚になり茎がしっかりしたら、ポリポットに移して仮植えします。ポリポットまきの場合は4~5粒まいて、本葉が5~7枚になって茎がしっかりしたら、花壇やコンテナに定植します。
  • スミレには、未熟種子と完熟種子の2タイプがあります。自家で種子を採取する場合、採取方法とタネまきに関しての留意点があります。
  • 完熟種子の場合、果実が上向きになってきたら完熟間近なので、種子が弾けて飛散する前に果実に紙袋をかぶせ採取します。採取した種子は、低温に当たることで発芽が促される性質なので、タネまきする前に、湿らせた川砂などに混ぜ込んで、冷蔵庫に入れ1~2ケ月冷やしてからタネまきします。
  • 未熟種子の場合、果実が真上を向いて硬くなったら、果実を採取してサヤを割ります。とり出した種子は、スグに取り蒔きします。普通にまいて1週間程で発芽します。
  • 苗の植え付け 
  • 適期は、2月~3月、秋は9月~10月です。春になると市場に苗が流通します。深植えにならないよう定植する。
  • コンテナの場合、植木鉢は深鉢、素焼き鉢を使いましょう。鉢底石を敷き、根鉢を傷めないように軽く古い土を落として植え付けます。土と根をなじませて定植したら、「用土」と「肥料」の項目で準備しておいた先程の土をコンテナに入れます。植え付け直後にタップリの水を施します。(株間は15~20cm)
  • 地植えの場合、「用土」と「肥料」の項目で準備しておいた先程の土壌に植え付けます。根鉢の2倍の深さと直径2.5倍の植え穴を掘り上げます。土と根をなじませて定植したら、植え付け直後にタップリと水を施します。株間は15~20cmで植え付けます。
  • 植え替え
  • 適期は、開花後の5月、秋は9月~10月です。
  • コンテナの場合、1~2年に1回を目安に行いましょう。用土と元肥は「植え付け」と同じです。一回り大きな鉢に底石を敷き、根鉢を崩さないように軽く古い土を落とし、傷んだ根は切り取ってから植え付けます。植え替え直後にタップリの水を施します。
  • 地植えの場合、基本は必要ありません。
  • 増やし方
  • 株分け→適期は芽出し直前の2月~3月です。植え替える際に、同時に作業しましょう。平地性の丈夫な品種は、株分けができます。株の分かれている場分を、手で裂くように分けます。傷んだ葉や古い根は切り取ります。作業後にタップリの水を施します。
  • 根伏せ→適期は、5月、秋は9月~10月です。掘り上げた太めの根を、5cm程の長さで切り揃えます。「用土」の項目と同じ用土に、横に寝かせるように植えたら、根が見える程度に浅く覆土をします。水を切らさないように管理して、発根を待ちましょう。

山野草の仲間です

コンテナは風通しのよい場所に置いて管理する

  • 水やり
  • コンテナの場合、土の表面が白くなってきたら、早めにタップリと水を施します。
  • 地植えの場合、基本的には必要ありません。
  • 手入れ
  • 防寒対策→地植えの場合、関東以南の平地であれば屋外での冬越しは可能ですが、寒冷地など凍結する場所では、株元にマルチングするなどの防寒対策が必要です。
  • 病気→うどんこ病、そうか病
  • 害虫→アブラムシ、ネコブセンチュウ、ハダニ、ヨトウムシ
  • 収穫
  • 自家蒔きのために、春の花後に結実した種子を採取して保存しておきましょう。病害虫の発生や、2~3年後に株が衰えてきた場合などに備えましょう。
  • 日当たり
  • 日当たりのよい場所を好む品種、半日陰を好む品種、日陰を好む品種など品種により好む環境が異なるので、コンテナの置き場所を時期や時間帯ににより変えてみましょう。
  • 地植えの場合、植えつける前に日当たりや水はけなど、場所の環境をチェックして定植しましょう。芝生の生える場所などが適しています。

段落のライン緑色